四まいのベース / 野球研究所(日本ハムファン)

内野6人外野3人で守るわけとは?

世界初!新外野2人守備誕生|考案者が解説するレフトを外す理由

新外野2人守備、レフト無配置シフト

新外野2人守備、レフト無配置シフト

本題に入る前に

「外野2人守備」は危険ですか?

もちろん危険です(笑)。広い外野を2人で守らなければなりません。ポテンと落ちるヒットが二塁打、三塁打、運が悪ければホームランになる最悪も起こりえます。

ただ一方で、外野を2人で守ることができれば、その1人を内野に回すことができます。バッテリィーも含めれば7人で守ることができます。そのため、打ち取った内野ゴロが運悪く外野に抜けるシーンは度々見受けられますが、そんな投手視点から見れば理不尽は激減することでしょう。

  • 外野2人のメリット・・・内野手間を抜ける打球の確率を軽減
  • 外野2人のデメリット・・ポテンヒットですらホームランの危険性すら孕む

要するにこれまでは、内野を7人で守るメリットがありながら、外野を2人で守るデメリットが上回り「外野2人守備」は敷くことはできませんでした。

そこで今回、私が考案した新外野2人守備は、外野手2人の配置に工夫を施し、2人でのリスクを軽減させています。この程度のリスクならば、ある場面ならば外野を2人で守ることも可能かと考えられます。

考案者が解説する新外野2人守備!|レフトをあえて外す理由

旧外野2人守備(=内野5人シフト)の失敗例

まず実際に起きた外野2人守備の失敗例から紹介します。下記の一シーンは外野2人守備が裏目にでた代表的な場面です(失敗ははじめてか?)。

2014年7月11日、巨人VS阪神戦でその衝撃が起きました。6回表、巨人の守備、先発の大竹寛が阪神に2点を勝ち越され、尚も1死二・三塁のピンチを迎えた時です。巨人原監督はおもむろにベンチから出ると、両手を高々上げナイン全員を呼び寄せました。しばらくすると、レフトの亀井義行がグラブを内野手用に持ち替えて、一二塁間に向かいました。外野手1人を削る「内野5人シフト」を敷いたのです。

映像はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=_0wm9-rIbdQ

この内野手を1人増やす内野5人シフトの目的は、前進守備の弱点である内野手間の打球が抜ける確率を低減させるためです。この6回表1死二三塁の場面も前進守備を敷かざるを得ない場面でした。

だが、残念ながら二番手の青木高広が投じた6球目は、西岡のおっつけ気味に出したバットに当たり、そのすっぽりと開いたセンターに。長野、松本の両俊足を飛ばしても追いつくことができない。思惑を嘲笑うが如くボールはセンターに転々と、阪神の2人の走者は相次いでホームインしました。
結局、内野5人シフトを敷いたがために、外野を2人で守らなければならなくなり、裏目にでた形です。それ以後、私が知る限りプロ野球界では内野5人シフトを敷く監督は登場していません。リスクが高い守備隊形と判断が下ったからでしょう。こうして1回のつまずきが、その後外野2人守備を敷かなくなったゆえんかと思われますが、だが失格の烙印を押すのは早計だと私は考えます。

外野手2人の配置

その原監督が敷いた内野5人シフト、もとい従来の外野2人守備は広い外野エリアを2人で守るリスクを軽減するために、左中間、右中間の後方に2人を基本的に配置します。広い外野を2人で守るための対策でしょう。余談ですがせまい東京ドームならば、たとえ裏目にでたとしても最悪、3塁打止まりでほぼ収まるように私は思えます。ランニングホームランまでは至らないのではないでしょうか。

従来の外野2人守備、内野5人シフト

従来の外野2人守備、内野5人シフト

が私が考案した守備隊形はその配置は取りません。大胆にもレフトを外し無配置にする隊形を敷きます。

外野2人守備 レフト無配置シフト

新外野2人守備 レフト無配置シフト

こうする隊形を取ることにより、外野を2人で守るリスクが軽減でき、いや攻撃側の出方によればリスク0も起こりえます。

レフト無配置シフトが有効な場面

では「レフト無配置シフト」を説明していきます。下記の想定場面は実際のデータに基づき仮定しました。本シフトが有効であろう場面です。もしあなたが攻撃側、ドラゴンズ森監督の立場ならばどの策の選択がベストか、考えながらご覧ください。

【想定場面】

2017年ナゴヤドーム、ドラゴンズVS阪神。この試合は両者譲らず均衡が破れなかった。が9回裏、ドラゴンズにサヨナラのチャンスが訪れた。この回、先頭の1番大島洋平が一塁線を破る二塁打で出塁した。打順の巡り会わせも良く、2番荒木雅博、3番セリーグ本塁打王、アレックス・ゲレーロ、4番ダヤン・ビシエドと続く。ドラゴンズ森繁和監督は定石どおり荒木のバントで送り、「1死三塁、ゲレーロ、前進守備」の場面をつくりたいところだ。

そこで、対する阪神金本知憲監督は動いた。セリーグセーブ王のラファエル・ドリスにスイッチ、且つレフトの西岡を内野に配置転換を図った。レフト無配置シフトを敷いたのだった(図参照)。

レフト無配置シフトが有効的な場面

レフト無配置シフトが有効的な場面
  • 荒木雅博 打率0・249 0本塁打 13打点
  • アレックス・ゲレーロ 打率0・279 35本塁打 86打点
  • ラファエル・ドリス 防護率2・71 37セーブ 85奪三振

【戦況解説】

9回裏同点、無死二塁、2番荒木、3番アレックス・ゲレーロ、4番ダヤン・ビシエドと続く。この場面、大リーグならば自由に打たせる選択肢も多々見受けられるが、

 日本人監督ならば「送りバント」

 唯一の策と言ってもいいでしょう。しかも、ベテランの荒木は300にも届く犠打数を記録しています。もし、バントを決めたならば、強打者ゲレーロに対して前進守備を敷かせることができます。サヨナラ勝利の確率がグーンと高まります。

そこで、阪神金本監督は次のように思索しました。「その前進守備の場面をつくられてしまったのならば、すでに打つ手がない。打ち取った内野ゴロですら、内野手間を抜ける場合すらある。ならば、その前段階、荒木の場面で勝負だ!」。

そこで、機先を制する策を打ちました。

レフト西岡に対して内野で守備するように命じました。

「レフト無配置シフト」

因みに、西岡は元内野手であり守備面には問題がありません。レフトに空いた穴に対しては、パワーピッチャードリスをマウンドに送りました。150キロを超す直球に対して、右打者荒木が意識してレフト方向にひっぱるのは難しい、との判断が働いたからです。

 金本監督が投げたボールはドラゴンズ森監督サイドにあります。バントか、ひっぱりか、それとも右打ち進塁打か、その選択が迫られています。

 【証明方法】

ここで専門家の分析ならば精緻なデータを持ち出し、「レフト無配置シフト」の有効性を立証することでしょう。昨今、主に大リーグでは三塁手がライトと二塁手の中間位置付近までポジションを移し、一二塁間を破る打球を処理する、そんなシーンが散見するようになりました。この守備隊形はデータの裏付けがあってこそ、大胆に選手を配置できるのでしょう。だが、私がその分野の知識がない理由もありますが、本シフトの立証方法として適当ではないと考えます。

「我々、高校球児はスポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦うことを誓います」との選手宣誓。最近はすっかり耳にする機会が少なくなりましたが、一昔前は定番の宣誓でした。正々堂々、真っ向勝負だからこそスポーツは感動が生まれる、日本人の脈々と生き続けてきたスポーツ観でしょう。だが、そのイメージする選手宣誓とは裏腹に、当事者は決して正々堂々と戦ってはいません。常に相手の嫌がること、出し抜くことを念頭にプレーを心掛けています。

例えば、ある打者がインコースが弱いと判断したならば、執拗にインコースを攻めます。捕手の肩が弱ければ、すかさず盗塁を仕掛けます。真ん中が打ちやすいからそこに投げる投手は誰一人いません。すなわち、相手の弱点を徹底的に叩く、もっとも人の嫌がるプレー(采配)をした人間こそ、評価される世界です。野村克也氏も言います。「ウソをついてでも勝つ。それくらいの気概が勝負には必要だろう」

「レフト無配置シフト」もこの場面で敷かれると

 攻撃側が「イヤだ!」

 その様に内面を推し量ることができるからこそ、有効性があると断定しました。

レフト無配置シフトを敷かれると、すべての策が無効になる

もう一度、戦況を振り返りましょう。9回裏、ドラゴンズにサヨナラのチャンスが訪れました。「無死二塁、2番荒木雅博」。ドラゴンズ森繁和監督は定石どおり荒木のバントで送り、「1死三塁、ゲレーロ、前進守備」の場面をつくりたいところです。

そこで機先を制する形で、守備側金本監督はレフト無配置シフトを敷きました。

レフト無配置シフトが有効的な場面

レフト無配置シフトが有効的な場面

森監督が打つ手は三択です。①送りバント、②ライト方向右打ち、③レフト方向ひっぱり、この3つの策から選ばなければなりません。がいずれの策の選択も森監督にとって「本意ではない」ことでしょう。一つずつ見ていきます。

 ①送りバント

 バント警戒のため内野7人守備を敷いたとしても、送りバントを断行する可能性が残されています。前述した通り、バントを成功させたならば、強打者ゲレーロに対して前進守備を敷かせることができます。サヨナラ勝利の確率がグーンと高まるからです。しかも、何度も修羅場を経験した荒木、バントの名手でもあります。

だが、送りバントの選択は警察官の増員を図った包囲網に対して、逃亡犯が強行突破を試みるが如しです。守備側金本監督の思惑通りです。また、バントでは手薄なレフトを攻撃できず(バントは100%外野にいかない)、金本監督はリスクを負うことなく二塁走者の進塁確率を低下できます。

 *尚、送りバント選択時のポイントは結果がどうであれ、レフト無配置シフトの効果が立証されたことになります。バントは外野に打球がいかないためリスクなく敷けたことになり、且つバントの成功率も低下できているからです。

 ②ライト方向右打ち

送りバント以外に二塁走者を進める方法として、ライト方向右打ちがあります。首尾よく二塁手に捕らせるゴロを打つことができれば、三塁に進塁できる確率が高くなります。同じく荒木は右打ちの達人でもあり、2017年シーズンに2000本安打を達成しています。因みにその達成した安打もライト前ヒットでした。

だが同じく、ライト方向右打ちの選択は手薄なレフトを攻撃ができません。が時にはバットのヘッドが返り、レフトに打球がいく場合もありますが、それは結果論に過ぎません。裏目に出たとしてもやるだけの手は打ったのだから、アンラッキーとして受け止めることができます。

③レフト方向ひっぱり

①送りバント、②ライト方向右打ちも森監督にとっては、相手の思惑通りであり筋がよくありません。残すはレフト無配置シフトの弱点、レフト方向ひっぱりを断行するしか戦法がありません。もし、奏功したならば、平凡なレフトフライであろうとも、二塁走者の生還は揺るぎありません。

さりとて、レフト方向ひっぱりはもっとも二塁走者の進塁確率が低くい打法です。ショートゴロ、サードゴロに終わったならば、二塁走者は釘付けになる可能性が極めて高いからです。しかも、投げるは150キロを超えるパワーピッチャーのドリス。送りバント、ライト方向右打ちならばそつなくこなす荒木でも、レフト方向ひっぱりは簡単ではありません。

因みにここでの想定は「無死二塁」でしたが、「無死一・二塁」ならばどうでしょう。打球がレフト上空に上がってくれれば最高の結果ですが、ゴロならば5→4→3、もしくは6→4→3とボールが渡り、一瞬にしてダブルプレーの危険性も孕みます。

 まとめ

このように、①送りバント、②ライト方向右打ち、③レフト方向ひっぱり、いずれの策を選択したとしても森監督にとって本意ではないことでしょう。ただ結果は判りません。荒木が強振、その打球がレフトにいき、裏目にでることも起こりえます。本シフトが失敗に終わるとするならば③レフト方向ひっぱり、を選択した時です。が、さりとて結果がでた時点ではじめて失敗が判明するのであり、策選択時の段階では野球のセオリーに反するひっぱりを選択させられた、その「してやられた感」は拭えないに違いありません。攻撃側にとってはすべての策が封じられて、厄介なシフトであることは相違ないことでしょう。

 尚「レフト無配置シフト」が敷ける戦況を表にまとめました。参考までにご覧ください。

「レフト無配置シフト」が敷ける戦況

「レフト無配置シフト」が敷ける戦況

最後になりました。通常通り外野を3人で守る理由を本書では、その「安心」と説きました。よほどのアクシンデントが起こらない限り、外野を3人で守れば大けがを負うことはありません。

ただし、言われて見ればその理由付けができるのであり、普段はほとんど認識はしていません。惰性に流され深く考えてこなかったと思います

この世に生を受け、子供の頃野球を知ると同時に6人:3人守備は、我々のDNA奥深くに組み込ます。野球とは内野は6人、外野は3人でプレーするスポーツである、と。サッカーではFW、MF、DFの人数が定まっていないために、その人数は常に考えなければいけませんが、野球では「なぜ、内野を6人で守るのか?」「外野を3人で配置に着かせる訳とは?」この問いを考える機会はありませんでした。考える機会がなければ、野球の基本守備隊形「6人:3人守備」を深く、理解の領域まで到達することはできません。

 

誰もが知っているようで、誰もが解らない

内野6人外野3人で守るわけ

『内野6人外野3人で守るわけ』橋村(きょうそん)著

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今回、紹介できなかった「ライト無配置シフト」も拙著に掲載しております。ご覧いただければ幸いです。